「破壊する創造者」を読む

投稿者: | 2015年9月21日

「破壊する創造者」という本を読んだ。

[amazonjs asin=”4150504202″ locale=”JP” title=”破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)”]

著者は、医師でもあり、進化生物学者でもあるフランク・ライアン。

本書で繰り返し述べられていのは、進化におけるウィルスの影響だ(特に前半)。
人間の遺伝子の中にはウィルスが侵入した痕跡が無数に残っており、ウイルスとの共生が生物としての人間(や他の生物)を進化・適応させていったということ。

後半は、異種交配、エピジェネティクスなど、突然変異以外の生物進化の可能性をウイルスとは違った側面から説明している。

これらの事実は、現在の進化論の王道である「突然変異」と「自然選択」により生物は進化してきたという説に修正を強いるものだ、というのが著者の見解。

総じて、進化は突然変異だけで進んだにしては多様過ぎる。突然変異以外の要素を付加した形で進化が行われたからこそ、現在の多様性があり、その証拠が続々と現れてきている。その例として、ウイルスとの共生、異種交配、エピジェネティクスがあると語られている。

また、著名な生物学者とのインタビューが随所に挿入されていて、興味をそそる。

現代進化生物学を知る上でオススメの本ではないだろうか。

ただ、ダーウィンの進化論に関して否定的な文章が見受けられるが、生物学の素人として言わせてもらえれば、進化を推し進める手段の多様性は続々と発見されている(今後も発見されるだろう)が、ダーウィン進化論の原則(自然選択による進化)は今も変わっていないと思うのであった。

本書の目次を以下に述べておく。

はじめに 変化の風
第一章 ウイルスは敵か味方か
第二章 ダーウィンと進化の総合説
第三章 遺伝子のクモの巣
第四章 AIDSは敵か味方か
第五章 ヒトゲノムのパラドックス
第六章 ウイルスが私たちを人間にした
第七章 医学への応用
第八章 自己免疫疾患
第九章 癌
第十章 新しい進化論
第十一章 セックスと進化の木
第十二章 人間とは多倍体か
第十三章 遺伝子を操る魔神
第十四章 新しい手がかり
第十五章 旅の終わりに

Virolution

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