進化生物学入門 宇宙発生からヒト誕生への137億年

投稿者: | 2015年8月30日

職場近くの本屋でふと目にして、思わず衝動買いをしてしまった。

[amazonjs asin=”4062921685″ locale=”JP” title=”進化生物学入門 宇宙発生からヒト誕生への137億年 (講談社学術文庫)”]

この本の原題は、1997年に東海大学出版会から発刊された「多様性生物学入門」という本である。それが2013年に講談社学術文庫から「進化生物学入門」と改題され出版された。
前書きには、その16年間を埋める生物学の情報が若干述べられている。

内容としては、3章に分けられる。

1章は、地球誕生から現代までの生物学的な進化の過程を、生命の多様性の歴史という軸で述べられている。
その中で、「カンブリア紀の爆発がなぜカンブリア紀だけにしか起こらなかったのか、現代の生物とは違い遺伝的な許容範囲が異なっていたのでないか」というグールドの説を紹介しながら語られていたり、「恐竜絶滅の原因は、地球が巨大分子雲を横切ったためではないか」といった説まで紹介されている。
今までの進化における諸説、論争が紹介されているので、非常に興味深い。

2章は、「種」というもの定義を中心に多様性の機構が述べられている。まえがきに記述されているように、この章が一番難しい。生物学的な専門用語も頻発しており、私としては概要をつまみ食いして理解した、という感じだろう。ただ、この章がこの本の肝であると思う。分類学的種、生物学的種、進化学的種という概念や種、半種、シンガメオンなどの例を取り、淡々とくどいほど種というものの背景にある事実を説明している。

3章は、ケーススタディとして、霊長類の進化を取り扱っている。現代の霊長類の細かい分類、過去地球上に存在していた霊長類の進化の歴史、霊長類間の遺伝子的な違いなどが述べられている。

数学科出身で生物学に関しては勉強中の身である私にとっては、少々レベルの高い本であった。特に専門用語が羅列してある箇所があるので、完全に理解するためにはそれなりの準備が必要なのであろう。(特に第2章)
ただ、現代における進化、種の分類に関する生物学者の考え方および研究方法を知ることができ、非常に感心するとともに、知的好奇心を大いに満足させることができた。(このように緻密な研究の上で学問というものが打ち立てられているのだ)

本書のもう一つの特徴として、著者の専門に関連するからだと思うが、植物に関する豊富な説明を上げることができる。通常一般的な進化に関する本は、動物中心に記述されているのが多いのだが、この本では植物に関する豊富な例が知見を広げさせてくれる。

生物学的な知識を更につけた後で、再読したい本だ。

ちなみに本書の構成を以下に述べておく。

学術文庫版まえがき
まえがき
第一章 絶え間なき創造 多様化の歴史
1 宇宙の誕生
2 地球の誕生
3 化学進化
4 生命の誕生
5 先カンブリア時代の微化石
6 真核細胞の起源
7 奇妙奇天烈な生物たち
8 カンブリア紀の爆発的多様化の特異性
9 非運多数死
10 オルドビス紀以降の生物界の変遷
第二章 種の問題 多様化の機構
1 種の概念
2 種内変異
3 種形成の様式
第三章 霊長類の系統と進化 多様化の一例
1 霊長類の特徴
2 現生する霊長類の分類
3 霊長類の進化
あとがき
引用文献
全般的参考図書
索引

進化生物学入門

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